「歯がきれいだと長生きする」。これは単なる言い伝えではありません。
237万頭以上の犬を対象とした大規模な調査で、「年に1回の専門的な歯科処置(スケーリング)を受けている犬は、受けていない犬に比べて死亡リスクが約20%低下する」というデータが報告されています 。
なぜ、お口のケアで寿命が変わるのか?
歯周病菌は、歯茎の血管から体内に侵入し、以下のようなリスクを引き起こします。
心臓への攻撃: 細菌が心臓の弁に付着し、僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病を悪化させるリスクがあります 。
腎臓・肝臓への攻撃: 血液中の細菌をろ過する腎臓や肝臓に慢性的な炎症を起こし、機能低下の原因となります 。
「歯石を放置すること」は、「毎日スプーン一杯の細菌を血管に送り込み続けること」と同じくらい、体に負担をかけているのです。
飼い主様が気づきにくい「隠れた痛みのサイン」チェックリスト
動物は本能的に「口の痛み」を隠す習性があります。「ご飯を食べているから痛くないはず」は間違いです。彼らは痛みより生存本能を優先し、我慢して食べているだけかもしれません。
以下のサインはありませんか?
・口臭がきつい(魚が腐ったようなニオイ、下水のようなニオイ)
・片側の歯だけで噛んでいる、硬いものを食べなくなった
・くしゃみ、鼻水が出る(上の歯の根元が化膿して鼻に貫通している可能性があります)
・目の下が腫れている(歯の根元の膿が溜まっているサインです)
・おもちゃに血がついている
・顔を触ろうとすると嫌がる、怒る
・前足で口元をこする仕草をする
・なんとなく元気がない、寝てばかりいる
これらが一つでも当てはまれば、すでにお口の中でトラブルが進行している可能性があります。
「お家でのケア」と「病院での治療」の違い
「家で歯磨きをしているから大丈夫」 そう思われる方も多いですが、実はそれだけでは不十分なことがあります。
お家でのケア(歯磨き)の役割=「予防」
毎日の歯磨きは、歯垢(プラーク)を落とし、歯石がつかないようにするための「予防」です。
非常に重要ですが、一度ついて固まってしまった「歯石」を歯ブラシで取ることはできません。